繁華街の喫茶店では、よく聞く会話。
「会員紹介するだけで、33,000円やで!」
「あなたのグループをつくって!いずれは自社ビルとか!!」
「今の仕事一本やとキツイよね〜」
マルチ商法というやつだ。
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今日は、久々に有給。
平日のスタバ。
ブレンドをオーダーし、着席。
隣の席に座っていたのは、20代前半と見える女性3人組だった。
冒頭の会話が聞こえてくる。
どうやら、勧誘側(仮にAとする)は一人。
2人組の友人に対して、入会と商品の購入をまくし立てている。
20分ほど経過しただろうか。
友人2人組は「考えをまとめたい」と、席を立ち退店。
席を立つやいなや、Aはスマホで電話をし始めた。
「今店出たから、追いかけて話聞いて!早く!!」
つまり、このAは、一人ではなかった。
子分を従えており、複数人で会員勧誘を行っていたのだ。
5分ほどすると、Aのもとに子分と見られる女性が2人やってきた。
「渋かったです〜」
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さて、マルチは一体何が問題なのであろうか。
「マルチ商法」
会員の紹介料や、商品販売のリベートを誘引として、会員を勧誘し、ヒエラルキーを築くものであるが、問題は大きく下記2点だろう。
・悪質な勧誘
・そもそも儲からない
・悪質な勧誘
SNSを通じて、会う目的を伝えずに勧誘。
密室で、複数人で取り囲み、勧誘。
契約書を交わさない、勧誘。
などなど、その強引・悪質な勧誘が問題視されている。
(組織そのものは合法である)
日本アムウェイは、上記のような勧誘により、2022年に消費者庁から取引停止処分を受けている。
・そもそも儲からない
正しくは、多くの会員は儲からない。ということ。
マルチの主な収入源は、会員の紹介料である。
無限に構成員が増えるのであれば、理論上は儲けることも可能だ。
仮に、組織トップのAの勧誘で入会した会員が、さらに2人ずつ会員を増やすとすると、
会員総数=2^n
このnが、27の時点で、日本国の人口を超え、33となると世界人口を超える。
つまり、会員を増やし続けるには限界があるのだ。
紹介料は、都度払いなので、収入はかなり早い段階で頭打ちとなる。
こうなると、もう一つの収入源である「物販」による収益を求めることになるのだが、これがまた苦しい。
化粧品や家電製品などの物販を個人へ販売するが、当然そこで発生した利益から上納金を差し引いたものが自分の取り分。
ただでさえ低い粗利から、上納金を納める。
ヒエラルキーの上層にいる者は、下にいる会員へ売りつける。
すると、下にいる会員は売り切れない不良在庫を抱え、結果的に大きな損失を被る。
販売されている製品そのものは、多くの場合が「まともな」製品だ。
製品に罪はなく、それを売る構造に問題がある。
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バカを使役する構造。
まさに「ヒエラルキー」である。
だが、売られている製品同様、会員にも罪はないように思う。
彼ら彼女らも、好き好んで騙されているわけではない。
今どき、公民や家庭科の授業で、マルチ商法や、クーリングオフについては学習するが、それでも無くならない。
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マルチ商法という仕組みのみならず、それが是正されない社会、能力(IQ・EQ)の遺伝格差、教育機会の格差、スタグフレーション
この世のあらゆる構造に問題がある。
そこに巻き込まれた人間に罪はない。
だからこそ、隣に座っている人の行く末を考えると、酷く胸が痛む。
しかし、私はなにもできなかった。
何もしなかった。